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2011年8月 2日 (火)

第64回神戸労働法研究会(その2)

もう一人は,オランゲレルさんが,ノースアジア大学事件を報告してくれました。秋田地決平成22年10月7日労判1021号57頁です。大学教員が無期から任期付き雇用に変わった後に,雇止めにされたというケースです。大学教員にとってはドキッとする事件です。
 もともと秋田経済法科大学と呼ばれていた大学が2007年にノースアジア大学に変わるときに,教員全員を任期付きにし,成績評価を厳格にして,結果次第では再任用を拒否するという制度を導入しました。初年度は全員1年契約で希望者は再任用されましたが,その後は再任拒否される教員も現れていました。本件の債権者Xは通算7年勤務ですが,任期付きに変わった後は,1回更新されて2年目から2年契約となり,結局,再任拒否されました。
 この事件は大学教員の任期に関する法律(任期法)による任期の設定であり,労基法14条によるものではありません。任期法と労基法14条の関係についてはよくわからないところがありますが,いずれにせよ任期法による任期だからといって,再任拒否を争うことができないことにはならないというのが,本決定の重要な判示部分です。 
 Xは,初年度は6段階評価の上から4番目のAマイナス,次は3番目のA,そしてその次の年は最も低いC評価でした。これは大学の許可を得ずに高校にアンケート調査をして,准教授から講師への降格処分を受けたことが影響しています。そして,再任拒否されてしまったのです。
 本決定は,雇止め制限法理は,任期法による任期付き雇用の場合にも適用可能とし,本件では,Xには雇用継続の合理的期待があると判断しました。そして,Xに対する降格処分は本件では重すぎて相当性を欠くので,C評価も不当であり,それを理由とする再任拒否には合理的理由がないとして,結論として2年契約が更新されると判断されました(保全の必要性も肯定)。
 もともと無期で採用されて,事後的に有期に変えられたこと,教員全員が有期であることという本件の特殊性や再任可能期間の上限が設定されておりそこまでは雇用継続の期待が認められてもよいのではないか,という理由もあげて,オランゲレルさんは決定要旨相当としていますが,研究会では異論もありました。有期への切り替えにXらは同意しており,その後は1回しか更新されていない点が気になるところです。ただ有期への切り替え時に考慮期間は1週間もなかったことには問題もあり,この点の評価をどうするかが一つのポイントとなるでしょう。また,研究会では,成績評価が悪くなかったということから,雇用継続の期待が発生しうるのでは,という意見もありました(3回目の評価は,結局,裁判所によって誤りとされているわけです)。いずれにせよ,本件のような事案で,再任拒否であっさり雇用終了という結論には,いささか違和感が残るのも事実です。
 教員の成績評価にどこまで裁判所が介入できるかは一つの論点です。公正査定義務の議論となるでしょう。かりに裁判所が成績評価が違法であると判断できるとしても,成績がほんとうは良好であったとみるべきという理由で,裁判所が当然に更新を命じることができるわけではないでしょう。雇止め制限法理の前提である雇用継続の合理的期待がなければ,更新の強制はできないはずだからです。ただ,そうした合理的期待がないときでも,損害賠償による解決(金銭解決)はありうるところです。その額は問題となりえますが,本件では,そうした解決もあったかもしれません。
 ところで,もし本件のようなケースで任期付きへの切り替えを拒否していたら,どうなっていたでしょうか。就業規則の合理的変更であればできるのでしょうか。変更解約告知の問題となるのでしょうか。私たちも来るXデーに備えて理論武装しておく必要があるかもしれません。

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