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2010年10月 5日 (火)

文献研究会

かつて季刊労働法において二回にわたって連載された文献研究会を引き継ぎ,第3期文献研究会を立ち上げました。先日,第1回の研究会を開きました。若手を中心として,これから数年にわたって展開される長期的なプロジェクトです。季刊労働法の来年夏号から連載予定です。過去の文献研究会,とりわけ第1期のものは,学界でも大いに注目されました。1978年には,『文献研究労働法学』(総合労働研究所)という形で本にもなっています。いまでも諏訪康雄先生の書かれた就業規則の部分などはよく引用されています。目標は,この第1期の文献研究会に負けないような実績を出すことですが,はたしてどうなるでしょうか。
過去3年ほど,法律時報の学界展望を駿河大学の石田信平君と担当してきましたが,膨大な数の文献(今回も650ほどがリストアップされています)の中から,実際に学界への理論的貢献という点で意味のあるものは10分の1にすぎないというのが私たちの評価でした。しかも将来的にも引用に値するものとなると数本になってしまいます。そのようななかで,これまでの学説史をたどりながら,現在の学界の理論的水準を確認し,今後の理論的課題を探っていくという作業は,研究の発展のためにも不可欠のことだと思います。このことは,前記『文献研究労働法学』のはしがきで,山口浩一郎先生も書かれているところです。さらに最近では,実務家も労働法の文献を目にすることが増えていると思いますが,どのような文献が学界で評価されているのか,読むに値するのかという指針を示すことも,研究者の使命だと思っています。
第3期の文献研究会も,批判的な精神を忘れず,しかし公平で恣意性のない分析をして,学界において信頼に足りる文献研究にしたいと考えています。自分たちと意見が合わないからといって読むに値しないというものではありません。結論が妥当でないと思っても,アカデミックな意味での論理の筋が通っていれば,もちろん学説として尊重しなければなりません。逆に大先生の論文でも,問題意識が不鮮明であったり,新規性がなかったり,論証が不十分であったりというものであれば,取り上げるに値しないと評価されることになります。
第1回の研究会では,大阪経済法科大学の本庄淳志君に派遣法制について担当してもらいました。労働者派遣という法制度は,1985年の労働者派遣法の制定により生まれたものですが,それ以前から,このような現象について,学説がどのような狙いをもって,どのような議論をしてきたかを知ることは,たいへん勉強になりました。学説の主たる関心は,昔から,労働者派遣先と派遣労働者との法律関係をどのようにみるかということにあったのであり,その後,法律で労働者派遣の概念が定められたことから,これまでの議論がより錯綜してきたような印象を受けました。四半世紀前に,労働者供給を違法とする時代から,労働者派遣の法認する時代に突入したわけですが,その後の規制緩和の時代を経て,議論がイデオロギッシュな色彩を帯びてきたような印象も個人的には受けました。1回の研究会だけですが,私にとっては文献研究のメリットを十分に実感できたような気がします。今後の研究会の進展が楽しみです。

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